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年始の三冊

· Books

明けましておめでとうございます。年末に首相の三冊(の少なくとも一冊)がひどいと話題になっていたので、私も便乗。インドネシアで買ってきた本から三冊を紹介してみたい。

『ワリソンゴ(九聖人):ジャワにおける宣教とジハードの台頭』(Rachmad Abdullah, Walisongo: Gelora Dakwah dan Jihad di Tnah Jawa, Solo: Al Wafi, 2018.)はジャワを中心に、現在のインドネシアにイスラームを伝えたといわれる九聖人の歴史書。ソロの急進派の拠点にある書店で購入。『日本国紀』さながらの修正史観で、イスラーム的にインドネシア国史を書直そうというシリーズ。イスラーム中学の科学教師が執筆しているところも、同じような匂いが。カリフ制国家がタブーになったインドネシアでの、イスラーム主義はこういう方向にきている。

『低能力の政治:狂った時代に尊厳のある政治を』(Abu Ridha, Politik Under Capacity: Menemukan Politik Bermartabat di Zaman Edan, Solo: Era Adicitra Intermedia, 2018)は、福祉正義党の政治家アブ・リドのエッセイ。同党の結成当時はカリフ制国家など政治論について、積極的に書いていたが、党の現実主義によって主流から外れたといわれている。その彼が満を持して再登場。こちらもソロで出版されたものだが買う時間がなくて、ジャカルタで入手。日本で博士号を取得した福祉正義党の知り合いに売っている書店がないか聞いたら、ネットで注文してデポックから即日で届けてくれた。そういうわけで、熟読して近著に反映させます。

『多様性法学の提唱:チルボンの肖像と試み』(Marzuki Wahid ed., Menggagas Fiqh Ikhtilaf: Potret dan Prakarsa Cirebon, Cirebon: Fahmina Institute, 2017)は、上記のイスラーム主義とは正反対の立場にある。イスラーム・フェミニズムの推進で知られるチルボンのNGOが出した、宗教的な多様性の尊重をイスラーム法学の立場から議論した論文集。2012年にあったチルボン警察内のモスクでの自爆テロが大きなきっかけになっている。

まあだいたいこんなテーマを今年も追いかけることになろうかと思います。すでにダウンロードしていただいているようですが、昨年10月の講演録をアップロードしています。過去の著作も小出しにしますのでご笑覧ください。