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アホック知事と民主化の成果

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「じゃかるた新聞」に月1回の連載を始めました。4月25日の記事がトップページから消えたので、備忘録的に関連リンクだけ追加した記事を再掲載します。続編は月間東亜6月号へ、掲載されたらこちらでもアップデートします。じゃかるた新聞次回掲載は5月30日、たぶんインドネシア・イスラームの「寛容性」とLGBTについて書きます。

監視カメラの映像を自らのiPhoneで見せるアホック(著者撮影)

 連日アホック・ジャカルタ州知事の話題をメディアでみない日はない。大統領になってメディアに直接話す機会が少なくなったジョコウィよりも、むしろ露出が大きくなっている。本コラムの第一回は、アホック知事を通して、1998年以降の民主化の成果について考えてみたい。

 念のため確認しておくと、アホックは副州知事として2012年に当選、ジョコウィの大統領就任に伴って、州知事に昇格した。2人はともに旧来のエリートではなく、政党政治家でもなかった。2005年に導入された地方首長直接選挙の恩恵を受けた、まさに民主化時代の申し子である。

 両者の台頭は、既存の支配層や政治のあり方に対する不信あるいは退屈を背景としていた。政党や宗教組織などに頼らず、有権者からの直接の支持が政治家としての生命線である。

 「新しいジャカルタ」をキャッチコピーにした2人の斬新な選挙運動と軽妙な発言は、「変化」を期待させた。実際に、ジョコウィが州知事に就任して以来、洪水と交通渋滞というジャカルタの二大問題に対する政策が目に見える形で動きだした。アホックの昇格後はそのスピードがより早くなっているようである。

 もっとも2人のスタイルはかなり違う。のらりくらりとかわすジョコウィに対して、アホックは直言型で、挑発的な発言も目立つ。アホック本人曰く、こうした発言は「観測気球」であり、政策を実行するか否かもネットの反応を判断材料としている。批判を繰り返すアカウントのIPアドレスは把握しているという(共同インタビュー、2015年10月30日)。

 実際、これまでの州議会やヤクザ組織との対立では、アホックは圧倒的な支持を受けてきた。昨年からは2017年州知事選に独立候補として立候補するための署名集めが「アホックの友達(Teman Ahok)」と称するボランティア団体によって行われており、すでに64万人が身分証明書提出の上、サインをしている。

 洪水対策のためのスラム住民の強制立ち退きについても、アホックは立ち退きを強いられる人々が保障を受けられるにも関わらず「わがまま」で抵抗しているとの主張を繰り返した。メディアも大半は知事の発言を無批判に流し、当事者以外からは大きな反発は生まれなかった。

 他方、人権活動家には評判が悪い。カンプン・プロ地域の立ち退きでは、ジョコウィ知事時代に合意された住民側からの代替案が、アホック就任後破棄されている。しかしこうした事柄が報道されることは稀である。

 最近明らかになった人工島開発の贈収賄事件ではアホック周辺の関与も浮上している。埋め立てで住まいを追われ、仕事を失うであろう漁民と彼らを支援する人権活動家に加え、環境NGOも州政府の計画に反対している。贈収賄事件の影響で抗議運動についても報道が増えている。

 知事の苛立ちは高まるばかりだが、少なくとも、こうした事件が追及、検証されることこそが民主化の成果といえるだろう。

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